タイフルーツブログ
2020.08.27
世界観
世界観という言葉、笑ってしまうほどどこでも乱発されすぎています。書評などを読んでいても「え?それ、世界観じゃなくて価値観でしょう」って言いたくなることがありますね。
この言葉、学問の世界では20世紀の初めから使われていたようでありますが、日本で一般に聞くようになったのは82年に公開された映画「ブレードランナー」が、90年代に入って再評価され始めた頃じゃなかっただろうか。人間とレプリカント(人造人間)の混じり合う近未来世界を描いたこの作品こそ「世界観」という言葉を用いて形容する必要がある作品。今でも何度も繰り返し観てしまう好きな映画ですね。
2年ほど前に続編の「ブレードランナー2049」が公開された際に前日譚として制作された渡辺信一郎監督のアニメ「ブラックアウト2022」、これがまた素晴らしい。
NEXUS-6、NEXUS-8。レプリカントが数年しか生きられないという、限られた生の時間を仲間のために使い犠牲になる、というコンセプトは同じ渡辺信一郎監督の「残響のテロル」にも通じるし、そして臓器提供を宿命づけられたクローン人間を描いたカズオ・イシグロの小説「わたしを離さないで」にも通じるものがある。
現代の人間存在のあり方への「かなり否定的な」問いかけ、つまり漫然と生きている本物の人間より、限られた生を生きているレプリカントの方がむしろ人間らしく「尊い存在」ということだろうな。