タイフルーツブログ
2021.03.08
クララとお日さま
先週発売されたカズオ・イシグロの6年ぶり長編「クララとお日さま」、読み始めたら止まらず、一気に読んでしまいました。
これまで作品ごとに全く違うジャンルの小説を書いてきたイシグロだが、今回は明らかに「わたしを離さないで」と同じ系譜に属する作品で、人間の子供に寄り添い、成長を助ける役割を与えられた主人公、AIのクララを通して語られる「寂しさ」や「愛」についての物語。
人間から失われた無償の愛や自己犠牲はAIであるクララによって体現され、「特別な何か」=「魂」とは複製されるものではなく、その人を想う周囲の人々の感情の中にこそあるものであることが示される。
東ロボくんの新井紀子教授によると、AIが人間の知能を越すとする「シンギュラリティ(技術的特異点)はこない」ということですが、現実世界でフェイクや陰謀論が蔓延り、それに乗っかる人々もまたかなりの多数である現在の世界の惨状を考えると、人間よりむしろAIに託される希望があっても良いと思えてしまう、ブレードランナーを観た時も感じたことですが。
これは映画化必至だなって思ったら、実はもう米ソニーピクチャーズで決定してるそうで。クララはどのような姿で再現されるのか、こちらも興味深い。